胡蝶蘭の原産地はどこ?原産地での姿や特質について

胡蝶蘭
豪華さと優美さを兼ね備えた花姿から贈答花の代表とされる胡蝶蘭ですが、近年ではミディやマイクロ胡蝶蘭といった小さく可愛らしい種類も販売されるようになり、ご自宅で楽しむ方も増えて益々人気が高まっています。

胡蝶蘭は上手に育てると50年以上もの長い間生きることができると言われており、胡蝶蘭にとって生育しやすい環境を整える上で、胡蝶蘭の原産地について知っておくことが大切です。

こちらの記事では胡蝶蘭の原産地やその環境、原種の育ち方についてご紹介します。

胡蝶蘭の原産地と扱われ方

胡蝶蘭(Phalaenopsis)はラン科植物の一種であり、主な原種(野生種)に「ファレノプシス・アマビリス(Phal.amabilis)」と「ファレノプシス・アフロディーテ(Phal.aphrodite)」があります。

まず、アマビリスとは“愛らしい”という意味であり、その名の通り、大きすぎず可愛らしいサイズの白い花を10~20輪一斉に咲かせるのが特徴です。 アマビリスの原産地は、オーストラリア北部、インドネシア、マレーシア、フィリピン南部、ボルネオ、スマトラ、ジャワであり、それぞれの国や地域で親しまれています。

インドネシアでは別名「Anggrek Bulan」(月の蘭)と呼ばれ国花に定められている他、マレーシアの都市コタキナバルの市花にもなっています。 また、ニュージーランドの先住民族であるマオリには“虹の色の雨粒から生まれた花”としての伝承が残されていたり、ニュージーランドでは、良いエネルギーを蓄えて悪霊を退ける、家庭円満などの御利益がある花として大切に扱われています。

オーストラリアでは、花の美しさから違法採取が後を絶たず、残念ながら今では絶滅危惧種となってしまっているようです。 一方、アフロディーテは、アマビリスより小さめの白い花を咲かせるのが特徴で、愛と美を司るギリシャ神話の女神「アフロディーテ」から名前が付けられました。 アフロディーテの原産地は台湾の南東部からフィリピンであり、アマビリスと同様、熱帯地域に生息しています。

台湾は日本とは胡蝶蘭の開発仲間ともいえる関係であり、台湾からのアフロディーテの種を日本で品種改良し、その種をまた台湾でさらに改良し……との繰り返しにより様々な種類の胡蝶蘭が誕生し、今では台湾は世界有数の胡蝶蘭の生産国となっています。

現在、日本で私たちが目にする鉢花として売られている色鮮やかな胡蝶蘭は、アマビリスやアフロディーテを原種として交配させたものが大半ではありますが、素朴な美しさからオリジナルである野生種を強く好む方もいらっしゃるようです。

胡蝶蘭原種の魅力、購入できる種類と生育方法も解説

胡蝶蘭の特性と原産地の環境からみる育て方

胡蝶蘭の水やり 胡蝶蘭の原産地である熱帯地域は、四季のある日本とは違い、年間を通して気温が19℃以上の暖かい気候です。
熱帯雨林に覆われた多湿な環境で、雨の降る「雨季」と、たまに起きる熱帯地域特有のスコール(驟雨しゅうう)以外には雨の降らない「乾季」があります。 このような環境で育った胡蝶蘭は、雨の少ない乾季の中でも生きられるよう、ぶ厚い葉や根に水分を保持しておく特質と、昼間ではなく夜間に二酸化炭素を吸収して光合成を行うことで、株内から水分が極力蒸発しないようにするという特質を持っています。

そのため、胡蝶蘭を育てる際には毎日の水やりは必要ではなく、乾燥したら水をあげるくらいが丁度良いのです。

また、原産地が年中温暖な気候であり寒さには弱いため、育てる上では冬場の温度管理が大切となります。
18~25℃が胡蝶蘭にとって最適な温度ではありますが、最低でも10℃以上は確保しておきたいところです。 その他、胡蝶蘭は風通しが良い半日陰の熱帯雨林に育つため、お部屋で育てる際にも、風通しが良く直射日光の当たらない明るい日陰に置いてあげるようにしましょう。

詳しい胡蝶蘭の育て方はこちら→ 胡蝶蘭の育て方・管理方法(温度・湿度・水やり)

胡蝶蘭の原産地での姿

原産地での姿
胡蝶蘭といえば、立派な鉢植えのイメージがありますが、胡蝶蘭の原種は「着生ラン」といって樹木の幹や樹皮、枝に張り付いて根を張りめぐらせて生息しています。
ただし、あくまでも「着生」しているだけであり、樹木から養分を吸収しているわけではないので「寄生」ではありません。 樹木に着生した胡蝶蘭は、自然の降雨や霧をはじめとする空気中の水分を吸収して成長しています。

乾期にはほとんど雨が降らずスコール頼みとなってしまいますが、それでも枯れずに生きてゆけるように、前述した通り水分を保持し、夜間に光合成を行う特質を持つに至りました。

胡蝶蘭は原産地においては、特に樹木の上の方の風通しのよい場所に生息していることが多いですが、樹木だけでなく、岩の上に着生していることもあります。

胡蝶蘭が原産地から日本に伝わるまで

原産地は亜熱帯
胡蝶蘭の原種は、19世紀前半に原産地である東南アジアで初めて発見されました。
当時ヨーロッパでは、南米から持ち込まれたラン科植物の「カトレア」がブームとなっており、上流階級の人々は珍しい種類のラン科植物を求めて「オーキッドハンター」というラン科植物専門のハンターを雇い、世界各地を探索させていました。

そうした中で発見されたのが胡蝶蘭の原種であり、当時の胡蝶蘭の花は茶色が多く、白い花は1割ほどしかなかったことや、花の様子が羽を広げた蛾のように見えたことから「Phalaenopsis」(蛾のような)と名付けられたとされています。

その後、希少な白い花の胡蝶蘭の原種を中心に品種改良が重ねられ、様々な種類の胡蝶蘭が出来、明治時代にイギリスから日本へ伝来しました。 当時はイギリスからの貴重な輸入品であったことや、原産地とは気候の違う日本では栽培が難しかったことから、胡蝶蘭は上流階級の人々をはじめとする一部の人たちだけが楽しむことのできる高級花であり、一般庶民には手の届かない花でした。

その後、日本でもさらに研究や品種改良が進められ、ビニールハウス栽培など栽培技術も上がったことから、安定した生育環境で胡蝶蘭を育てることができるようになり、今では胡蝶蘭は贈答花の定番となるなど私たちにとって身近な花となりました。

ただし、身近になったとはいえ、他の花や観葉植物に比べると胡蝶蘭が高級であることに変わりはありません。 胡蝶蘭は揺れに弱いために輸入が難しく、研究が進んだとはいえ原産地と環境の異なる日本で栽培するのには高度な技術や工夫が必要となるためです。 また、胡蝶蘭を種から育てて花が咲くようになるまでには、約5年もの歳月がかかります。

このように、市場で販売されるようになるまでに手間暇がかかるため、胡蝶蘭は他の花や植物に比べて高級ではありますが、だからこそお祝いなど特別な日、大切な方への贈りものにふさわしい花であるのです。

原産地は胡蝶蘭を永く楽しむためのヒント

年間を通して温暖な熱帯地方が原産地である胡蝶蘭は、樹木に着生し、葉や根に水分を保持したり、水分の蒸発を最小限にするために夜間に光合成を行うという特性を身に付けながら生息しています。

四季のある日本では原産地の環境と同じようにすることは難しいですが、冬場の気温に気を付けてあげるだけでも、胡蝶蘭にとって育ちやすく快適な環境になります。
胡蝶蘭を育てる上で、何か困ったことや分からないことがあった際には、原産地での胡蝶蘭の様子に思いを巡らせてみると、そこにヒントが隠されているはずです。 胡蝶蘭にとって過ごしやすい環境をつくり、大切な胡蝶蘭を末永く楽しむことができると良いですね。